本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年6月30日

 六月三十日 火 雨 昨日留守ニ安藤が来てくれたと云事だつたから今日ハこつちから出かけた 十一時半頃ニ向ニ行着き久し振の事だから友達の消息から画の話茶屋の話色々出た 例のレーキハウスニ出懸けてめしを食ふ事と為つた 雨にぬれた柳がフオンニ為り煙の如き上野の山が遠景ニ為り手前ニ明石の被物を被た女とハ色も形も丸で画だつた ゆつくりして湯などニも入り六時前ニ安藤ニ別れて築地へ向つた 今晩ハ花房氏から会の相談で精養軒のめしニ呼バれて居る 行つたら明治美術会の頭株ハ勿論金子堅太郎氏 外山正一氏 辰野氏等が見へて居た 議論ハつまらぬ事計り 又オレハ非常ニ頭が痛く為て来たから一と通り意見を述べて仕舞つて九時頃ニ先ニ一人帰つた

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