本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年3月17日

 三月十七日 火 (京都日記) 今日も中村と写生ニ行筈ニして置たが朝から雨だ 仕方がねへ 巴里の河北から手紙が来たから其返事をぼつぼつ書き始めて居た処ニ伊藤快彦がやつて来た ストーブの前で中村と九鬼さんの美術ニ付ての演説など読だりして居る内ニ夜ニ為つた めしを食ハふとして居た時ニ松原が這入つて来た 松原の家の処分法などを話してめしを三人で食つた 中村が財布を落したと云騒ぎが始まり一緒ニ車で奴の内迄行た 財布ハ内ニ置いてあつたので安心 それからぼつぼつ歩いて祇園の壇下でポンムを買ひ山堀でカツフエを飲みしばらく雑談をして中村ニ別れて帰つたのハ十一時頃 今日ハ岡倉氏 久米公等から手紙が来た 河北へやる手紙を書て仕舞つて一時半頃ニねる

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