本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年3月3日

 三月三日 火 (京都日記) 今日ハ朝から雨が降つて居たがとうとう又雪ニ為つた 三代子さんが来て仕事した 四時頃ニ酒を命じてぐじ酒をして飲んだ 恩順師が久し振ニ見へた 奈良の方へ行て居たとの事 玉葉さんハ今日ハ名古屋行でお休みと云知らせ 女連も恩順も帰つて仕舞てめしを食て居たら煙筒からやにが流れ始めた 寝床をのけるやら机を片づけるやら大騒ぎをやらかした 実ニ此の煙筒計ニハ閉口するわい 今度も去年の末と同じ事で矢張石炭のせへニ違なし 雪雨で道が中々悪いが例の如く散歩ニ出掛ケ暗黒町方面を探検し新橋ニ到りし時ハ十一時頃也 尾張楼の新宅ニ夜具など運バして一泊した 相宿のものの待人や化物語ニ夜を深かし寝入つたのは四時頃だつた

to page top