1896(明治29) 年1月15日


 一月十五日 水 (京都日記)
 夜半の一時半頃ニ人が這入つて来た びつくりしてネぼけ目をこすつて見れバお栄と玉葉と松原だ 此連中芝居の帰りとか云事 持つて来た蜜柑ナドヲオレニ食ハしてとうとうネむい目をさまさして仕舞上つた 夫れハよけれど泊り込むと云騒ぎ 驚いた話だ 水画の道具を持て午後二時頃ニ内ヲ出たら又オレノ行処ニついて来ると云様子 余り馬鹿気て居るのでとうとう逃げて知恩院の中ニ入りあとを暗ました ぼつぼつ散歩して粟田口の方から廻ハつて川端ニ出三条から木屋町ニ入り河野嘉平ヲ向陽館ニ訪ひ又三条の□□(原文不明)屋辺まで行く 夜食後松原と安藤の内ニ行き三人連で祇園町ヲ一力を始め二三軒ひやかし玉川屋と云ニ上る