本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年1月11日

 一月十一日 土 (京都日記) 朝起て見れバ雪が盛ニ降て居る 巴里の杉竹公にやる手紙を書く 巴里のスフローの小さな部屋ニ居た時の事など思ひ出す 郵便を出しニ行た序ニ湖水の雪景色などを一寸見て帰る 又善光寺山ニも登る それから宿屋の隣の牛屋で牛鍋を食ふ 午後三時頃ニ中村がひよつとやつて来た オレが金無しで居るから金を持て云ハヾ身受ニ来て呉れたのだ 夕方から一緒ニ出て栄川を渡て唐崎の松の方面へ向け散歩す 時々雪が降つて来て景色中々よし 余り時刻がおそくなるから松を見ることハやめニして帰る 夜三時頃迄話をしてねる

to page top