本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年1月16日

 一月十六日 木 (京都日記) 朝九時半頃ニ内へ帰り面を洗ひめしを食ひ新聞を読で居た処ニ河野嘉平が見へた 又一力のお春さんが来た 之レハ昨夜オレが一力亭の木戸口でお春さんが居るか居らぬかを尋ねて居ぬと云ので這入るのを止めたから何の用が有つて尋ねたかと思つて来たのだ かれこれして居る内ニ十二時も過て仕舞つたから河野と一緒ニ出て平野屋で河野の御馳走ニ為た 松原も一緒ニ呼バれて来た 食後小堀から白河の方へ三条へ出 又裏道を通つて二条へ廻り遂ニ木屋町の向陽館迄河野を送つて帰る 内ニハ中村と吉川が来て居た……夜食ハアトリエで平野屋からの仕出しを食ふ それから内ニ引込で居て十時頃迄松原と話をした 今夜の様ニ少しも世間ニ出ないと云のハ珍らしい事だ

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