1896(明治29) 年1月14日


 一月十四日 火 (京都日記)
 今日ハ十一時前ニ朝めしを平野屋から取寄せて食てぐづぐづして居る処ニ中村が来た 十二時半頃二中村と一緒ニ西洋料理の勝栄亭ニ行き夫れから Papa の用事で安居神社の社司鳥居と云人ニ逢ニ行き松原通のもとの借家の前の酒屋の爺をたづね乞食の巣を通りぬけてから一と廻りして又松原通ニ出三条ニ廻つて木村虎吉をたづねて逢ひ夫れから中村の内へ一寸寄り又寺町から仏光寺辺の道具屋を冷かし帰て又晩めしを平野屋から取らせて中村と食ひ食後四条京極等を散歩し針糸及ビヅボンのボタンヲ買フ 縄手大和橋下ル東側の縄のれんの料理屋ニ入り入口の処の机ニよつて酒を飲だ 中村と二人で正宗の小瓶ヲ二ツのみつまらない箸の付け様もないつまらネへ食物を一つ二つ並べた丈五十銭とハ少々高をすナ