本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年4月10日

 四月十日 金 (京都日記) ナンダカ頭痛がする様で少し変だ ホテルで Cafe au lait を飲んだ 知恩院の中を散歩して内へ帰り午後仕事をした いやに暑いやらで気分が悪く我慢して勉強をして居る処ニヒヨツと河野嘉平が見へた 奴ハ暫らく国へ帰つて居たとの事 何処かへ晩めしを一緒ニ食ひニ行ふと云事ニ為つて中村も来合して居たを幸一緒ニ行た 河野の撰でみの吉ニ行た 此のめしの間ハ気分が最もよろしくなかつた それから河野が大可から仲居や芸子を呼び寄せるさわぎと為つた これが始まりで円山の桜見ニ行くやら又都踊ニ行くやら又踊を見てから大可で幇間の芸を見ると云次第 皆河野のおごりなり 十二時半頃ニ内へ帰る 昨日見おさめと思つた都踊を又一度見 幇間なる動物ニハ生れてから始めての対面

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