本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年4月9日

 四月九日 木 (京都日記) 今日の暑ハ又昨日より一層強いやうだ 昼後一時から五時半迄庄の足や頭を木炭でかいた 四時半頃ニ中村が来た 一緒ニ世阿弥ホテルに晩めしを食ひに行た 今日夜桜の近辺から又此の花の為ニ四条から祇園町をぞろぞろ上つて来る人の多い事非常なもんだ 留守ニ藤島了穏と安藤が来た様子 さて夜食後散歩をして万亭ニ立寄り同亭の案内で都踊を見ニ行た これが多分今年の名残り 又来年の春ハ何処ニ居る事か分らぬ しばらくサイナラらしい 帰りニ万亭ニ寄つたら先つき呼ニやつた安藤がメートレスを連て来て居たから一寸景気付きお磯ニ酒を飲ませる事をやつて遊んだ 帰りニ付いて来たから四条通でまいて仕舞つた

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