本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年4月8日

 四月八日 水 (京都日記) 昨日ニ引かへ今日の天気ハ至極上等 暑迄加つて夏の入口ニ為て来た様だ 昨日の雨と此の暑さで夜桜が咲き始めたと云とポツポツチラホラの様だがそうぢやない 一面に開いた 夏服を引出してそれを被て散歩して来た これでも暑い 汗をかいた 借家聞合せの事で陣屋の寺内の処から寺町の山本へ行て来た 午後ハモデルの庄次郎を相手ニ仕事した 足のデツサンをやつた 五時頃ニ中村が来た 又間も無く安藤も見へた 一緒ニ四条の橋ギハの先斗町へ入ろうとする角の松田的の料理屋ニ行てめしを食た 後ち新地ニ帰つて来て中村ニ別れて安藤とバンブウニ這入つた 今夜夜桜の近辺の点茶屋でハ赤いランテルヌなどぶら下げて大層賑やかだ 今日の昼めしニハ西洋料理の弁当を取り寄せて食た めしを食て Verlaine を読で居た処ニ竹公の手紙が届た

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