本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年4月3日

 四月三日 金 (京都日記) 大牟礼が九時過ニやつて来たから奴の Etudiant domestique ニ為る事ニ付て略話をし一緒ニ朝めしを食た 中村も来て三人でアトリエに行た 丁度堀江氏が不識庵とか云ほつくの先生を連れて来て居て堀江氏の美術論の原稿を読んだ 十二時ニ為つて大牟礼ハ帰り松原と中村と三人で平野屋で飲み且食ふ 松原が国へ帰る銭別の為め也 アトリエニ帰り石炭の積んで有る小さな庭ニ出て四時頃迄紅茶など飲でぼんやりして居た 中々いゝ心地だつた それから松原ニ別れを告げ中村と相乗で下鴨ニ画をかきニ行た 夕方迄仕事をして松葉ニめしを食ニ行た 又松葉で風呂ニも入つた 後ち散歩して公園の中の茶見世ニ休みなどして十時半頃ニ宿屋ニ帰つた

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