本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年4月7日

 四月七日 火 (京都日記) 今日の様ニ雨の強く降つた日ハ近頃ニ少ない 朝中村の処ニ行て友禅を東京へ送り出してもらつたり又銀行ニ行てもらう事をぢゞいニ頼で来た 中村と一緒ニ奴の内の少し上の方の鳥屋ニ行てめしを食た 内へ帰つたらお栄と庄次郎が来て居た お栄ハ三代子が来られないと云断の為ニ来たのだ 其処で庄をモデルとして仕事した 中村が晩方ニやつて来たから平野屋からめしを取り寄せてお栄と三人で食つた 食後馬鹿話をしたり雑談をしたりして二人共十一時頃迄遊で行た アヽ実ニ今日の雨ハ強く降る ガラス屋根の下ニ居ると丸で川の底ニでも居る様だ 此頃ハ身の行末の事など考へ出して心細い様だ 今日ハ別けて其感が多く出た

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