1897(明治30) 年1月14日


 一月十四日 木
 朝目が覚めて見たら隣の部屋ニ母上と下女の声がした ストーブニ火などたきつけて有る様子 直ニ起きた 見れバ世間ハ雪で真白だ 瓦に一尺程も積もつて居るらしい 年頭の手紙の返事などをかいた 伊藤が朝から来て色々家の飾つけなどニ付て仕事をしてくれた 今日ハ鹿児島や台湾などニも手紙を出して安心した 午後四時頃ニ白瀧がかいた画を見せニ来て序ニ岡田の病状を話した 実困つた話だ 夕方ニ為つて合田と菊地が来た 此の二人と伊藤と四人で母上の処で晩めしを食ひ後又ストーブの前で御維新頃の東京辺の風俗などの話を聞いた 十一時ニ三人とも帰つて行た 今日の様ニオレが終日内ニ居たのハ珍らしい