本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1901(明治34) 年3月6日

 三月六日 水 晴 (欧洲出張日記) 午前にギベルチやドナテロ作の諸聖の像が立て居るオールサンミケレ寺とウフヰジ美術館を見た 千四百九十八年五月二十三日にサヴヲナロルが焼殺されたといふシニヨリアの辻の飯屋で昼飯を食ひ馬車でサン・マルコの宿坊に馳け着けアンゼリコ筆の数多のフレスコを見 それよりサン・マルコ寺に寄りイノツサン寺にてジヨツトと称する大きな張付の図を見 ギルランダヨの油画の掛けてあるイノツサン病院内の念仏堂 スピネロ・アレチノ壁画のサン・アンブロジオ寺等に這入り帰り路にミケランジユが住んだと云ふ家の前を通り昼飯を食た 飯屋に立寄り一と休みやらかし又其近所の写真屋に立寄り八時頃宿屋へ帰る

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