1896(明治29) 年2月22日
二月二十二日 土 (京都日記)
一時頃ニおうのが来たので仕事を始めたが急ニ真青ニ為つて仕舞ひ上つた どうしたのだと思へバ目舞がするとか 先づ一通り治まる迄オレの寝床の上ニねせて置きそれから帰へしてやつた 四時頃ニ為つて恩順師が見へたから暗く為る迄師を手本ニしてかきかけの足の画をかいて仕舞つた 丁度晩めしをやらかして居る処ニ中村が這入つて来た 中村ニハ二三日逢ハなかつたから風が強く為りハしないか兎も角今夜たづねて見様と思つて居た処だつた 昨晩届いた Paris-Noël を見せたりして十時頃迄話しそれから一緒ニ散歩ニ出て京極の中の金魚亭で汁粉を一杯ヅヽ食ひ三条通で別れ内へ帰つたのハ十一時頃