本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年2月17日

 二月十七日 月 (京都日記) 雪がちらちら実ニいゝ景色 かけひの水で面を洗ふなどハ目がさめるわい だが昨夜の寒かつたのニハ少々致された 被物を被た儘でねたが夫れでも寒むかつた 十時頃から散歩に出掛け証拠如来など云処を見て来た 昼めしを食てから一時頃ニ立つた 八瀬ニ来た時ハ早二時半頃 山端の平八で一寸腰をかけ茶をのみ鳩八橋を買いしてかじつた 雨がぽつぽつ来たから急いで此処を立ち京の三条の橋へ来た時ニハたしか五時頃だつた それから三条の中島で葉巻の煙草を買ひそれをふかしながら縄手の古道具屋や冷かし新橋の通りで尾張楼の娘ツ子のお三代ちやんが外で遊で居たのを連れて高砂と云鳥屋ニ入りめしを食た 三代子もやつて来た 後ち尾張楼へ行て三人でしばらく鞠なげをして遊んだ 帰る前ニお栄が玉葉を連れて現ハれ出た 内へ帰つて見たらお峯の手紙と為替が母上さまからをくつて来て居た

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