本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年2月27日

 二月二十七日 木 (京都日記) 十時六分の気車で京都へ引返さんとて皆ニ別れて宿屋を出二三町行た処で西村天囚氏の書生大牟礼氏ニ遇つた 一寸車をとめて話した 実ニ今日ハ天気もよく田舍の景色ハ春めいて来た 梅も咲いて居る処が気車から見へて居る 京都へ着て新橋の高砂ニ這入りめしを食ふ お栄さんを呼ニやつたら直ニ来てくれた 今日の手本の処分ニ付話をした 食後尾張の新座敷ニ上つて茶を飲みながら手紙を二三本書きそれから内ニ帰つた 間も無く中村が来たから一緒ニ散歩ニ出て岡崎から若王寺 南禅寺の辺をまわつて来た 晩めしハ勝栄亭 食後四条通を散歩して古本などを買つて京極の金魚亭ニ一寸休んで汁粉を食ひ河原町で中村ニ別れて帰る

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