1896(明治29) 年2月18日
二月十八日 火 (京都日記)
昨夜受取つたお峯からの為替の返事を母上様と姉上様へ出し又鎌倉へ一昨日見た売屋敷の報告をした 午後お栄どんが砂糖を持て来て呉れて浮世の馬鹿話をするのを聞きながら大原でかいて来た画などをかき直したりなんかした そんな事でもじもじして居る内ニ早夕方ニ為つて仕舞つた さてあかりも付けお栄どんハ帰ろうとして居た時ニ松原から手紙が来て万花園ニ待て居るから来いとの事 其処で忽ち弁当を平らげて出掛けて行た 万花園ニハ去年の十一月ニ此のアトリエが未だ出来上らぬ頃ニハ毎日程しばらく泊つて居たが今年ニ為つてからハ今日がはじめてだ