本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1896(明治29) 年12月26日

 十二月二十六日 土 (房総旅行記) 中々いゝ天気だ 合田が十時頃ニ来て一寸話して行つた 今日ハ伊藤も見へてる 留守中の建築の事を奴ニ頼だ 清が来て居て荷造をしてくれた 十一時半頃ニ出かけ様として居た処ニ世界の日本からだと云て人が来た 一寸逢つて話を聞きそれから立つた マアこれで俗世界をのがれた心地だ 久米の処ニ寄つて荷物を置き清新軒でめし 小代が間も無くやつて来た 一時ニ久米の処ニ行て三人で出かけた 本所のステーシヨンの二時の汽車に乗り一時間たつて千葉に着き此処のステーシヨンで三十分待ち四時半ニ大網ニ着いた ステーシヨン前の茶見世で油げを食たり又まぐろのさしみを食たり正宗を飲だりして勢づきいよいよ東京を離れて気楽ニ為つた 宿屋を聞合したら清宮と云のがいゝと云ので其処ニきめた 鰯のすぬたをこしらへさせ豚を取り寄せて食ひながら例の如く狂歌狂句をやらかし後花がるたを十二時頃までやつた 小代が花がるたの先生でやつて見たが中々面白いもんだ

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