1901(明治34) 年8月17日


 八月十七日 (箱根避暑旅行日記)
 安全の位置ニ寝て居ながら世間の物凄じい風雨の音を聞て居ると云ふのハ気持のいゝものだ などと思つて昨夜ハ寝込み今朝六時半頃に目を覚まして見れバ未だ風は吹続いて雨戸等ががたぴしやつて居る こう頑固にやられてハ実ニ五月蠅くなるなり
 昼飯前ニ権現の森の中より湖辺の石原を歩く 此の頃よりして風力衰へ間もなく天気平常ニ復したり 三時頃に至り空曇り再び風起る 夕方に霧立ち込めたる事昨日の如し 即ち此の景を写す 夜八時半頃にハ風又全く静まりたり