本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1901(明治34) 年8月28日

 八月二十八日 (箱根避暑旅行日記) 早朝晴天昨日の如し 然るに九時頃に至り一片の煙湖上に横ハりしかと思ひしに急ち屏風山も塔ケ島も霧中ニ消えて湖水ハ全く大洋の如くに為りたり 早昼にて一同宿へ出懸けたり 又土産物を買入れ拙者は髪を剪り髯を剃る 同伴の文子は両三日前より少しく不快なりし故今日此の宿にて医師に診断を乞い薬を得さしめたり 例の如く四時頃ニ焼麺麭を食ひ紅茶を飲み五時半頃元箱根ニ帰り来る

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