本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1887(明治20) 年8月29日

 八月二十九日 月 雨 (トレポール紀行) 今日藤島 久松両氏ヘ端書ヲ一通ツヽ出したり 今朝レール氏ニ魚市ニテ逢ヒタリ 而白葡萄酒ノ御馳走ニナリ後チレール家迄行キタリ 午食後二時頃ニ又レール家ニ行キヌ 後皆サントカジノニ行キタリ 夜食前みなし子ノ学校の生徒が皆揃ふて舟遊ビニ出掛ケント舟ノ上ニテ音楽ヲ奏スルヲ見タリ 食後亦レール家ニ行キ珈琲ノ馳走ニなり後ち皆さんと例の如クカジノニ行キタリ 途中橋ノ角ニテ先キノ生徒ガ軍楽ヲ奏シテ学校ヘ帰ヘリ行クヲ見 往来ノ人皆拍掌シテ祝シタリ 其生徒皆ミナシゴニシテ男女二ツニ別ち男ハ前ニ進み楽ヲ奏シ 女ハ後ニ従テ歌ヒタリ 生徒ハ皆十三四歳ヨリ十七八歳位の者也

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