本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1887(明治20) 年8月28日

 八月二十八日 日 雨降リタリやむだり也 (トレポール紀行) 今日ハ断岸の上ニ十字架ヲ建ツル儀式ガアル由ニテレールノ妻君等ト共ニ見物ニ行カン事ヲ約シ置キタル事ナレバ午食後レール家ニ行キタリ(食後道ニ同家ニ行キタル時ニハイツデモ珈琲ヤ果物の馳走ニなる事也)二階ニテしばらく話をなしそれより皆そろつてホテルドフランスノ珈琲店ニ行キタリ 之レ此処ニテ行列ノ過るヲ見ン為メ也 行列ノ過る時ハ四時頃ニテ大雨ノ降る最中なりし 行列の人数中白衣ヲ被タル十三四歳位の女子ヤ少年がびたぬれニなりて過ル有様ハ実ニあわれなりけり 夜食後レール家ニ行キタリ レール氏が烟火ヲ上ルヤラ又小生ガ青キ火ヲ道ノ真中デモヤシタリ又二階ノエンガワデ其火ヲ付ケレールノ妻君が白布ヲ頭カラカブツテヲバケノマネヲシタリナドシテ十時過マデ遊ビタリ(マワリドウロウヲ四ツ五ツ往来ニナラべ立テ見物ナドシタリ)

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