本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1887(明治20) 年8月14日

 八月十四日 日曜日 晴 (トレポール紀行) 今朝ハ久松君ト海岸などヲ遊歩セリ 午後四時頃ニ例ノ如クレールノ妻君等ニカジノニテ出遇ヒタリ 今日ハイバナサンガ一冊ノ小ナ書物ヲ持ち来リタリ 之レハ日本デ云ハヾ女大学トデモ云ヒソウナモノニシテ行儀ナドヲ記セシモノナリ 其中ニ人ノ気ニ入ルニハ如何ニス可キモノナリナドト云フナドモ記シ有リタリ 如此本ナドヲ持ちてカジノニ来ルナド皆我身ヲ売リ付クルノ一助トナサンガ為メナランカ 随分御骨ノ折レル次第ナリ 此ノ年頃ノ女ノ心中思ヒヤレバ吹キ出シソウナリ 弾丸ノアタラヌ処デ戦ヲ見物スル様ナモノニテ少シモ関係ナキ外国人ノ身ニテ亭主サガシヤ嫁サガシナドヲ見テ居ル程奇ナル見物ハ又トアルマジ 今夜々食後モ亦カジノニ久松君ト共ニ行キタリ

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