本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1887(明治20) 年8月20日

 八月二十日 土 晴少シ雨 (トレポール紀行) 今朝バンハルトランヨリのお手紙ヲ受ケ取りたり 此頃ノ天気ハ晴ト云より曇ト云方也 午食後レール家ニ先日ムルヲ入レモち行キタル網ヲ取リニ行きたり 今日ハ二時頃より仏蘭西ホテルト云旅店ノ主人ナルルトレートル氏ノ別荘ニ行カントノ事故久松ヲ呼ビニ帰リ海岸などヲ尋ねしかども見当タラズ依テ一人ニテ又レール氏ニ行キタリ おばあさん おつかさん及イバナさん都合四人ニテ出掛ケタリ 一町計りの処故間モなく着シタリ 後チコイユト云若キ男モ来りたり 此ノ人ハ所謂色男ト云風ノ人ニテ至テしやれもの也 イバナの母さまが此ノ人ヲ娘ノむこに引キ込まんとする風見エたり 実ニ奇ナリ 五時半頃皆打ちつれ立て帰りたり 夜食後ハ例のカジノニ行きたり 今夜ハ久松氏少シ不快にてカジノニ来らず 只食事後遊歩のみして帰られたり

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