1895(明治28) 年1月17日


 一月十七日 (従軍日記)〔図 合田清板刻の著者スケッチ〕
 松方氏ハ露国のヴボカク大佐の居ル処ニ宿して居らるゝ故今朝又訪ぬ 島村久氏モ一緒ニて久振ニ松方氏ト島村氏トノ面ヲ並て見た事故和蘭の公使館の時代ヲ思ひ出した 平川小学ニ居た楠本が島村君ノ従者と云つてやつて来た 松方 島村ノニ氏ト共ニ行政庁ニ行く 今度荒川氏の代ニ来た某少将と云人を見る オレ等がいよいよ明日立つので少シ荷の片附方をせねバナラズ諸氏ニ別れて帰る 夜管理部の某軍吏が酒ニ酔て天鉄の処ニやつてきてさわぎを始め中々ねられず 非常ニ失敬ナ事ヲ云てりきんで居るし他ノ連中が御尤々と云調子ニ大ニ腹が立ち同室の堀井君と共ニ已ニ一とうち打てくれんと迄思ひ込だれど我慢したり かれこれニテ三時過迄ねられず 人ノ感情ハ不思議ナモノカナ