本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1895(明治28) 年1月25日

 一月二十五日 (従軍日記) 今朝九時半頃迄ニ荷の仕舞ヲ済まし十一人打連れて営城へ向けて出発ス 此海岸の景色遠景が地図メイタ雪の山ニ左ニ極平ナ波ノ少シモ無イ海ガ見エルカラ tableau ニ為ラズトモ目ニハ心地よし ヲマケニ天気が極イヽノデ興津辺の浜辺ヲ行く心地ス 荒川氏の一行ガアトカラ来テ一緒ニ為ツタ 荒川氏ヨリ久米 杉 トロンコワよりの手紙ヲ受取れり 直ニ開て此ノ晴々とした浜バタヲ歩きながら読ム 真ニ愉快也 途中ニテ寺内少将ドラブリー ボーガツタ 池内中佐 原田大尉等ニ逢フ 皆馬ニテ後ヨリ来り行過グ 栄城ニ近クニ従ヒ雪モ多クナリ道悪クナル 午後三時頃栄城ニ着ス 此城ハ金州ヨリ小サク又キタナシ 併シ此城の建築ハ随分古きものと見ゆ 夜ドラブリー氏の処ニ一寸夜話ニ行き帰りてねる 時ニ十時頃也 大砲ノ音聞る事しきりニして気分何となくすずし 城ニ入テ島村 松方ノ一行ニも逢フ

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