1901(明治34) 年8月25日


 八月二十五日 (箱根避暑旅行日記)
 宿の書生や石内方へ皆にて昼飯を食ハんが為ニ行く 拙者ハ一人先発にて出掛けたるニ因つて連の者共が来るまでに諸処を散歩することを得たり 廃寺を二ケ所程見たり 可也大なる寺に住持の無きハ聊何故なるか此様ないゝ寺を空けて置くのハ随分惜いもの哉 後園の荒れたる中に初秋の色々な花が咲いて居るなど趣味少なからず
 昼飯が済だ頃に雨がぱらぱらと降り来りしかども暫時のことにて霽れたり 東京の親族などへの土産として名物の細工物を買入る 午後四時半頃元箱根村ニ帰着す