1896(明治29) 年2月28日
二月二十八日 金 (京都日記)
起ると直ニ便をやつて手本の来るのを断り十一時半頃ニ車で俵屋ニ行こうとして三条の橋迄行て樺愛と川村鉄氏ニ出逢ひ一緒ニ瓢亭へ行た 樺資英も大可の若い代物を二ツ引張てやつて来た 二時五十五分の気車ニ間ニ逢ふ様ニ車でかけ付け此処で皆ニ別れた 博覧会でおなじみに為つた青山盈教氏ニステーシヨンで逢つて前の茶店でビールを飲で三十分程話をした それから車で三井銀行ニ行たがしまつて居たから直ニ中村方ニかけつけた 中村と一緒ニ安藤の処ニ病気見舞を兼て出掛けて行つてうす暗くなる迄話した 安藤ハ未だ寝て居た 千もとニ晩めしを食ひに行つたら魚が無いと云て間ニ合せのものを命じもしないのに持て来るので腹が立ち此の家を飛び出し神田川ニ入り笑話しながら腹一杯食た