本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
四月十日 日 晴 昨夜風強ク戸障子ノ音ニ三時頃マデ眠ラレズ閉口セリ 本日ハ御体温八度ノ上ニ出デズ 結構ナリ 小西氏午後三時頃来診 中丸君午後二時過見舞トシテ来リ四時頃マデ語リタリ 夫レヨリ夕刻マデ庭ノ桜ヲ写ス 夜合田親子三人（夫婦ニ長女）連ニテ夜話ニ来リ十一時半頃去ル 十二時床ニ入ル 今晩椽先ニテ食事セシニ蝙蝠ノ飛ビ回ハルヲ見タリ 本日モ少シク風有リシガ暖キ事ハ昨日ニ異ナラズ 日曜ノ事トテ被飾リタル娘子夫婦者ナド門前ノ通行可也賑カナリキ 赤阪見附ノ花ハ真ニ雲ノ如シダ
四月十一日 月 晴 午後少シク曇 暖 午前十一時頃小西氏来診 母上ノ御容体ニ就キ経過良好ノ旨被申聞 正午頃乾見舞トシテ立寄ル 午後二時頃父上御入来 今朝吉川ヨリ持参セル歌選表装見本入御覧 又吉川ヨリ番頭ヲ呼ビ寄セ今一部更ニ調製ヲ命ジタリ 中村モ来レリ 父上ハ四時過御還被遊 中村ハ夜食後去ル 夕刻昨日写シタル桜花ノ図ヲ修正ス 夜和田三造絵羽書図案数葉持参 又合田ノ妻君 藤枝師同道夜話ニ来ル 十一時過客盡ク辞去 夫レヨリ吸入ヲナシ十二時過床ニ入ル 吸入ハ拙者昨夜ヨリ鼻ト咽喉トノ間ニ異状ヲ覚エ不快ナル故ナリ 先般来ノ薬餌ハ不規則ナガラ今ニ引続キ服用シ居ルナリ
四月十二日 火 曇 暖 風ナシ 御容体本日ハ又昨日ヨリ宜シキ方ナリ 小西氏ハ午後四時頃来診 本日ハ気分何トナク余リ勝レズ 故ニ客モナク至テ静ナリシカドモ筆ヲ執ラズ 夜ニ入リ長原君来訪 九時過マデ語ル 同氏ヨリ西洋花二鉢贈与 咽喉ハ未ダ癒ズ 吸入ヲナス事三回 十時半寝室ヘ入ル 鹿児島黒田信子様ヨリ乾ノ事ニテ書状来ル 直チニ乾ヘ端書ニテ至急来車アラン事ヲ申送ル 中川九郎氏ヘ印税ノ件ニテ面会ヲ請求セリ
四月十三日 水 晴 暖 少シク風アリ 御容体昨日ト大差ナシ 小西氏ハ午後七時過ニ見舞ハレタリ 午前中川九郎氏来リ掛合ヒタル件ニ付手違ノ云訳ヲナシタリ 午後一時過父上御入来 廣瀬中佐ノ葬式通行後御還リ被遊タリ 乾来リタル故鹿児島ヨリ同人ヘ渡ス可ク依頼セラレタル書状ヲ手渡ニス 小林萬ノ妻君見舞トシテ来レリ 電話ニテ呼寄セタル吉川ノ番頭ヘ歌選中誤字ノ有ル分丈新規印刷ノ見積ヲ命ズ 樺山愛 川村鉄ノ二氏来訪 夜三造作絵羽書ノ修正ヲ試ム 拙者今夜ヨリ含嗽剤ヲ用ユ 本日ハ一回モ吸入ヲナサズ 十一時頃寝室ニ入ル 本日ハ庭ノ桜花全ク雪ノ如ク飛ビ散リ芝生シロジロトナリタリ
四月十四日 木 曇 三時頃ヨリ雨 本日ハ不意ナ事ニテ午後御体温八度二分ニ達シ大ニ驚キタリ 併シ夕刻小西氏診察ノ結果是レ全ク一時ノ事ナラントノ事ナリ 今更斯様ニ御熱ノ上リタル理由ハ本日ハ正ニ幸子二十年祭ニ相当スルヲ以テ幸子ノ事ナド色々御考ヘナサレタルガ為ナリトノ事也 午前九時父上御入来 歌選ニ就テノ御話アリ 十一時前ヨリ十五番地ヘ御越被遊タリ 十二時前千野儀正氏見舞トシテチヤボ雌雄持参 又午後一時頃味□（原文不明）清煕氏モ来訪 菓子箱一個贈与セラル 後チ三造 合田 佐藤ノ三氏来ル 三造等ト語リナガラ石楠花ノ写生ヲ試ミタリ 夜又合田来リ十時半頃マデ語ル 鹿児島平之町ヨリ小包到着セリ
四月十五日 金 曇 午後雨 御容体大ニ宜シ 御体温ハ格別下ラズ七度八分位ナリ 小西氏ハ午後七時頃来診 午前十時頃茂子来リ姉上神経痛ニテ御難儀ノ事ナド語ル 夫レヨリ用達ニ行キ正午又立チ寄リ共ニ食事ヲナス 本日ハ植木屋二人草取ノ為メ来リタル故午後三時頃マデ植木屋ヲ相手ニシタリ 後チ昨日カキカケタル石楠花ノ花ヲ写ス 夜和田三造例ノ絵羽書ヲ又三四枚持参 十時頃マデ同人ト共ニ一二枚修正ヲナス 此ノ絵端書ハ磯谷ノ取次ニテ某出版店ノ依頼ナリ 総テニテ三十枚作ル筈ナレドモ容易ノ業ニ非ズ 十一時過寝室ニ入ル
四月十六日 土 雨 寒シ 御気分ハ昨日ヨリ引続キ宜シキ由ナレドモ御体温ハ矢張七度九分位マデ昇ル事アリ 尤モ低キ方ハ六度七八分マデ下リタリ 小西氏午後二時頃来診 午後一時過横山林吉 図画通信社主某ヲ伴ヒ来リ四時頃マデ語リタリ 夕刻御造営局依頼ノ織物下絵ノ案ヲ試ム 晩飯ノ時台湾ナル加藤重任氏ノ訃ニ接ス 去ル六日逝去ノ由ナリ 先日マデ故文蔵君遺事録ノ事ニ就キ手紙ノ往復ナドヲナシ居リシニ突然此ノ通知アリ 実ニ驚キタリ 夜藤枝師来談 十時頃去ル 夫レヨリ吸入ヲナシ十一時半頃床ニ入ル 昨夜三時迄床ノ中ニテ新聞ヲ読タル為カ本日ハ少シク頭痛セリ 咽喉ノ方ハ大キニ快シ
四月十七日 日 曇 時節相当ノ暖カサナリ 本日モ午後三時ニ於テ八度ノ御体温ナリ 掛物掛替ニ就キ少シク斜ニナリタルヲ直サセル事ナドヲ自ラ御下知サレタ御疳ニ障リタルニヤトノ事也 午後三時頃小西氏来診 別ニ異状ナシト申サレタリ 父上様午後二時頃ヨリ御入来 丁度弘文館ノ番頭来合セ居リ歌選訂正ノ事ドモ打合セ中ニテ直チニ御目ノ前ニテ注文ノ件申渡シタリ 大迫氏午後三時来訪 父上ハ四時頃御還リ 大迫氏ハ五時頃マデ談話 裏座敷ノ方ニハ下山芳子殿 阿清同伴ニテ来訪 一寸父上ニモ面会セラレタリ 善兵衛 橋口家出入ノ百姓ヲ連レ来リ先年来打捨有リシ畑ヲ作ラセ呉レタリ 合田西洋ノ種物ヲ持チ来リ花壇ニ蒔ク 夜櫻井ガ世間ニテ聞込タル戦争談ヲ夢中ニナツテシヤベル 今夜「ミイ」（猫）児ヲ産ム
四月十八日 月 晴 相応ニ暖カナリ 小西氏夕刻来診 本日ハ今迄ノ内一番宜シト申サル 午前順聖院公御肖像ノ事ニ就キ寺田弘氏来訪（橋本博士紹介） 同氏ノ話ニ袖ケ崎御屋敷ニ二三人老女有リ 順聖院公ニ接近シ居リシ人達ナレバ其人等ニ話シテ御肖像ニ就キ参考ノ為メ拙者ノ質問ニ応ジ意見ヲ述ベ呉ルヽ様取計ラフベシトノ事也 午後斎藤良一氏久シ振ニ来ル 又中村 和三等来レリ 其他樺愛 順聖翁肖像画写真ノ事ニテ玄関マデ 普及舎小宮山氏新ラシキ印税帳ヲ持参シ拙者ノ印ヲ採リ古キ方ハ拙者ノ手元ニ残シ置キタリ 夜中村等ト語リ十一時半頃寝室ニ入ル 中村ハ今夜泊ル 台湾横山林ヘ向ケ加藤氏ヘノ香典ヲ送ル
四月十九日 火 雨 御容体ハ昨日ニ同ジ 最高御体温七度六分 先ヅ大ニ安心ナリ 午前九時頃中村同伴俥ニテ登校 一ト通授業ヲナシ後懸賞裸体画構図ノ審査ヲナシ午後五時前帰宅セリ 学校ニテ藤 長 小 和 岡ノ諸氏ニ面会セリ 昼ニハ精養軒ヨリ弁当ヲ取リ寄セタリ 夜食後約束ニ因リ安藤先生来ル 共ニ文蔵様遺事録中ノ某氏寄贈文ノ字句入ヤ修正ヲナシ十時ニ至レリ 十一時寝室ニ入ル 北海道ノ南鷹次郎ヨリ町田氏ヘ送リタル文蔵様校長時代事蹟ニ関スル記録今夜町田氏ヨリ使ニテ届ケ呉レラル 又別ニ南氏ヨリ書状一通受取ル 右ノ記録町田氏迄送リタル旨記載アリ
四月二十日 水 細雨 御容体今日程宜シキハナシ 其代リニ今朝ヨリ種子頭痛ニテ就床 少々発熱 午後七時頃（点灯後）小西氏例の如ク来診 種子モ序ニ診察ヲ受ク 咽喉ト腸トニ故障アリトノ事也 拙者ノ咽喉病ハ本日ニ至リ全ク平癒セルガ如シ 然モ用心ノ為メ未ダ薬用ヲ廃セズ 午後二時頃父上御入来 一時間計ニテ御還リ被遊タリ 又樺山愛輔照国公御肖像ノ事ニテ来レリ 御肖像ノ写真本日正午頃出来 直チニ其修正ニ着手セリ 夜ハ文蔵様遺事録編集ニ従事ス 十二時寝室ニ入ル 種子ハ今夜裏座敷ニ在リ 先日普及舎ヨリ画手本訂正ノ申込有リ本日小宮山氏ヘ第一編丈渡ス 今回ノ訂正ハ画中ノ点線等ヲ僅ニ添削スルニ止マルモノナリ
四月二十一日 木 本日ハ始メテ御体温七度ノ上ニ出デズ 種子モ大ニ快キ方ナリ 午後一時半三年町島津邸ニ寺田氏ヲ訪ヒ同道ニテ袖ケ崎島津邸ニ赴ク 照国公御肖像ニ就キ批評ヲ請ハンガ為ナリ 家令家扶ノ連中ヲ始メ老女連ニ拙画ノ御肖像ヲ示シ銘々の意見ヲ聴キタリ 老女ハ皆々油画ノ前ニ座リテ拝ヲ為スコト神ニ対スルガ如シ 殊勝ノ至ナリ 迫水氏ニモ面会 批評了リ皆々引取リタル後暫ク迫水氏トノミ語ル 寺田氏ハ他ニ用事有リテ止レリ 拙者ハ同邸ヲ出テ寺島伯ヲ訪フ 不在 又志田町ニ山芳翁ヲ訪ヒ長時間雑談 夫レヨリ赤阪西華園ニ立チ寄リ草花類四五鉢購ヒ帰ル 此等ノ花ハ明朝母上ニ呈スル積ナリ 帰途赤阪福吉町ニテ秋月君ニ逢フ（平田町五ノ一五ニ住込） 丁度点灯頃帰宅セリ 夜少シク新聞ヲ読ミ又遺事録ヲ開キ処々添削 十一時半寝室ニ入ル
四月二十二日 金 晴 午前九時頃ヨリ登校 授業ヲ了リ十二時過帰宅セリ 午後一時半頃ヨリ東宮御所御造営局ニ出頭 織物ノ下絵ヲ持参シ股野 堤 片山ノ諸局長ニ閲覧セシム 又佐野 菊池等諸氏ニ面会シ四時過退出 帰宅後合田ト共ニ西洋野菜ノ種蒔ヲナシタリ 夜藤枝師来談 十時半ニ至ル 十一時寝室ニ入ル 母上ノ御容体益良好 小西氏夕刻来診 本日不在中寺島伯来訪 昨日ノ礼也
四月二十三日 土 晴 御容体如前日 本日ハ小西氏不快ノ為来診ナシ 午前九時半頃田中猪太郎君来リ順聖公御肖像製版ノ事ヲ相談ス 又序ニ遺事録中ニ挿入ス可キ写真製板ノ事ヲモ打合セタリ 十時頃佐々木宏七郎ト云人片山東熊氏ノ紹介ニテ美術学校入学ノ事ニ就キ来レリ 昼飯ノ時筆屋払雲堂来リ食後ニ面会セリ 午後一時頃吉澤春海来ル 同氏ニ織物図案下絵着色ノ事ヲ依嘱セリ 夕刻合田来ル 夜食後斎藤氏来リ十時頃迄共ニ遺事録ノ訂正ヲナス 又合田 一青年大野某氏同伴来訪 此ノ大野氏ハ綱祐ヘ数学ヲ指南スル約束ニテ本日ハ見知合ノ為メニ来レリ 午前善兵衛来リ畑ニ野菜ノ種ヲ蒔キ呉レタリ 迫水久中氏ヨリ見舞トシテ玉子一箱贈与 直ニ礼状ヲ発ス 又鹿児島宮ノ原高子殿ヘ母上ニ代リ書状ヲ贈ル
四月二十四日 日 晴 少シク風 本日モ御容体昨日ニ異ナラズ 午後三時頃小西氏来診 午前山田成章 吉岡育ノ二氏来訪 吉岡君ハ此度薩摩地方ヘ旅行シ今日ハ見舞トシテ来リシナリ 午後一時前父上御入来 一時間計御物語アリテ御還リ相成ル 今夜ホテルサントラルパンテオン会ノ催アリ 五時半頃ヨリ出掛ケタリ 来会者二十名 盛会ナリシ 九時半頃ホテルヲ出テ杉竹トブラトブラ歩キ数寄屋橋マデ来ル 此処ニテ同人ニ別レ杉ハ電車拙者ハ伴ヲサセ居タル俥ニ乗リ十一時帰着 半時間後寝室ニ入ル
四月二十五日 月 晴 風有る事如前日 中々暖カナリ 御容体異状ナシ 小西氏ハ不快ノ由ニテ来診ナシ 午前十時頃大久保梅子殿来訪 午後東京堂主人大橋氏絵端書ノ件ニテ相談ニ来レリ 又普及舎ノ小宮山氏修正画帳受取ノ為メ来ル 残ハ三冊ノミ 其外乾 直綱等来ル 時々庭ニ出テ少シク植木屋ヲ下知シテ草花ナドノ植直ヲナシタリ 夜食後照 綱祐 知足等ト天神ノ縁日ニ出懸ケ草花類ヲ沢山購ヒ夫レヨリ拙者丈橋口家ヘ回レリ 十一時頃帰宅ス 女子共ノ色々世間話ニ余念ナク笑フヲ聴キ覚エズ十二時過ニナリタリ
四月二十六日 火 曇 昨夜中ヨリ風強ク本日ハ終日吹キ続キ夜ニ入リ少シク雨フリ風止ム 暖気ハ一層加ハリタルガ如シ 御容体矢張昨日ト同様ナリ 小西氏ハ本日モ不快ニテ来ラズ 午前九時頃ヨリ登校 夕刻帰宅 午前十一時半頃渡辺千春君及電報新聞社員両三名同伴来校 懸賞金ヲ贈与セラレタリ 昼飯ハ精養軒ノ弁当 同席者藤 長 中 和 小ノ諸氏 午後競技風景画ノ審査ヲナシタリ 夜斎藤氏ト十時迄例ノ遺事録訂正ヲナス 今夜八時頃藤枝師一寸見エタレドモ拙者仕事中ナリシカバ別ニ話モセズ二十分間計居リテ立チ去レリ 十一時寝室ニ入ル 蒸シ暑シ 鹿児島ヨリ為換入書状今夕刻到来
四月二十七日 水 午前細雨 午後霽 漸次御快方 殊ニ本日ハ御気分宜シキトノ事也 小西氏ハ先日来歯ノ痛ニテ本日モ来診ナシ 午前佐々木宏氏来訪 昼飯ニハ藤枝氏ヲ招キタリ 是レ送別ノ意ナリ 同氏ハ本日午後五時発ノ汽車ニテ帰国 又昼飯ニハ父上モ御出被遊タリ 午後小林萬吾 中丸精十郎 町田咲吉三氏来訪 夜食後和田三造 合田清ノ二氏来訪 十一時半頃寝室ニ入ル 本日ハ終日客ノ相手ノミ 町田氏ハ橋口家対本田家一件落着ニ就キ其知ラセノ為メニ来リシナリ
四月二十八日 木 晴 御容体益ヨシ 小西氏ハ歯痛未ダ全ク癒ズ 代診名取氏午後二時頃来レリ 午前青木繁来リ同人ニ対スル学校ノ処分決議ニ関シ拙者ヨリ同人ノ意見ヲ聴キ且ツ忠告ス 午後中村君来ル 夕刻樺愛君例ノ印刷ノ事ニテ来レリ 夜食後小林萬来ル 又突然清来レリ 御用ニテ栃木県下ヘ出張帰任ノ途次ナル由ナリ 合田モ来リ語ル 小萬 清ノ二人ハ僅カノ間ニテ去リ合田ハ十二時ヲ聞クマデ居リタリ 中村ハ今夜泊ル
四月二十九日 金 晴 夜十一時頃雨 御容体大ニ宜シ 小西氏午後七時頃来診 午前安仲来ル 本日ハ中村ト共ニ登校ノ筈ナリシガ清ヲ昼飯ニ招クガ為在宅セリ 昼飯ニ清 父上ト同道ニテ来レリ 是レ笄ヘ電話ニテ清来リタレバ御一緒ニ御出被下度旨ヲ申上置キタレバナリ 三時頃マデ語ル 後チ庭ニ出テ少シク植木屋ノ下知ヲナシタリ 夜安藤ト例ノ修正ヲナシ十時半ニ至レリ 十一時半寝室ニ入ル 今夜照ヲ以テ清ヘ餞別ノ金品ヲ贈ル 清ハ橋口家ニ泊リ居ルナリ 贈リタル金品トハイサベラ烟草二タ包ト金三円ナリ 本日父上ヨリ金100y丈月末支払ノ為御下賜相成候 是レニテ先月以来下サレタル金子合計400.00yナリ