1900(明治33) 年6月8日


 六月八日 (欧洲出張日記)
 九時ニ船が出た 今日ハ寒暖計三十四五度だ 先づ昼間ハ無事に済んだが夜十一時頃ニ部屋ニ這入つたらどうも眠られず ねむられないから国の事など思ひ出して居ると息がくるしくなり気が遠く為つた 仕方がないから看護人を呼び起し薬などをのんで再び寝た
 今日までハ一つの部屋ニ一人で大ニよかつたが西貢から大変人が乗つたからオレは岡崎 飯塚の二氏と同じ処ニ這入る事と為た 其上ニ今一人爺の仏人が一人同室だから四人詰の一室満員と為つて中々窮屈だ