1900(明治33) 年6月24日
六月二十四日 (欧洲出張日記) 晴天だ 今日は所謂紅海を通つて居る 寒暖計は摂氏の三十五度 時々焼土の島を見かけた かもめはいくらも船に付て飛で居る 其声は丸で赤子か猫がなくやうだ 海の平かなる事は池の水に更ハらない 風はなまぬくいが断へず少しづゝ吹て居る 三十五度でもさ程には思ハない 三十五度は華氏の九十五度位だ 処が今日は夜に為つて却て暑いやうだ 佐藤 青山 岡崎の三氏とかるたをやつて仕舞つて丁度十一時に寒暖計を見ニ行つたら三十二度に為つて居る さすがに熱帯だ