1913（大正2） 年12月7日
十二月七日 日 晴 午前十時過信州鉄女一年半振ニ来ル 午後一時半三越ヨリ仮縫ヲ持参ス 二時ヨリ日暮マデ画室ニ籠ル 是第五日也 八時四十五分新橋発鎌倉ヘ赴ク 来合タル荻原氏及鉄ニ送ラル 照子 稲同行
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1913（大正2） 年12月8日
十二月八日 月 晴 （鎌倉） 午前十時過起出 朝昼兼体ノ食事ヲ済マセタル後建築場ヲ見回ハリ諸種ノ指図ヲナシ夕刻海浜ヘ赴キ日没後ノ空ト海ヲ写ス 夜ハ経師屋ヲ呼ビ見積ヲ命ジタリ
1913（大正2） 年12月9日
十二月九日 火 曇 （鎌倉） 本日モ午前午後トモ建築場ヘ出向キタリ 又経師屋ノ件及電灯取付ノ件等ヲ取極メ午後六時十七分発ニテ帰京ス 今夜去七日附梅北ゆかヨリノ書状到着ス
1913（大正2） 年12月10日
十二月十日 水 雨 昨夜安眠セズ 今朝九時約ニ依リ川 木二氏ト調度事務所ニ会合 又十一時ヨリ女学部会議ニ出席 午後モデル来リ共ニ画室ニ入ル 是第六日也 晩食後韻松亭ナル国民美術評議員会ヘ赴キ帰途岩男ヲ始メ九名ニテ松兼ト称スル小料理店ニ寄リ一時半頃帰宅ス
1913（大正2） 年12月11日
十二月十一日 木 晴 本日ハモデル遅刻シテ三時頃来ル 直チニ筆ヲ執ル 五時ヨリ浜町岡田ニ開催ノ祝賀会ニ出席セリ
1913（大正2） 年12月12日
十二月十二日 金 正午間際ニ研究所ニ行キ授業ヲナス 午後モデル来ラズ 独画室ニ在リテ旧作ノ手入ヲナセリ 五時過ヨリ照ト帝国座ニ女優ノ千代荻文芸連ノサロメ等ヲ観ル
1913（大正2） 年12月13日
十二月十三日 土 晴 （箱根） 牛呑連旅行 午後一時二十分新橋発 同行十人 岩村 中澤 山本 矢崎 安齋 松山 北 岡野 岡田 今夜箱根塔之沢玉の湯ニ泊ル 夜ニ磯谷来リ加ハル
1913（大正2） 年12月14日
十二月十四日 日 半晴 （箱根） 午前五時迄快談 九時頃起出午後三時過塔之沢ヲ発シ帰途ニ就ク 九時頃新橋着一行十一人松山方ニ到リ食事ヲ為シ十一時解散ス 近来ノ快旅行也
1913（大正2） 年12月15日
十二月十五日 月 曇 午後モデルヲ相手ニ第八回ノ仕事ヲナス 夕刻即四時頃鈴木徳子来訪 留メテ共ニ晩餐ヲ取ル 七時ヨリ研究所ヘ出向キ和田君ト会合新築二階画室開キヲ兼種々打合ヲナセリ
1913（大正2） 年12月16日
十二月十六日 火 雪 午前十一時登校 和田 中村二氏出席 学期末成績ノ調ヲナシ二時過帰宅 三時ヨリ一時間程第九回ノ仕事ヲナセリ 後庭ニ出テ樹上ノ雪ヲ払ヒタリ
1913（大正2） 年12月17日
十二月十七日 水 晴 午後第十回ノ仕事ヲナス 但シ時間ハ略昨日ニ等シ 夜中丸君来リ将来ノ方向ニ付相談ヲ受ク 後チ兼清 孝ノ二子来リ共ニ栗山氏ヨリ貰ヒタル塩辛ノ湯漬ヲ食ス
1913（大正2） 年12月18日
十二月十八日 木 晴 露国大使ヨリ午餐ニ招カル 二時半頃帰宅 直ニ仕事ニ従事ス 是第十一回也 夜梶山氏来レリ 露大使館 同席者新任大使夫妻 本野大使夫妻及大鳥男ナリ
1913（大正2） 年12月19日
十二月十九日 金 晴 十一時半頃ヨリ上野ヘ出向キ校長ニ面会 大正博ノ件ニ付一時過マデ語ル 夫レヨリ鎗屋町ノ米国式旗亭ニ於テ小川君父子及渡邊鹿兒麻呂君等ト会食 但小川君ノ招待也 夜林鐘子及給子来
1913（大正2） 年12月20日
十二月二十日 土 晴 午後渡孝君 中勝君来 モデルハ昨日モ来リタレドモ夕刻帰宅セシ故筆ヲ執ラズ 本日ハ三時頃ヨリ第十二回ノ仕事ヲナセリ 夜知道 兼清ノ二子来ル 客去テ金魚池ノ覆ノ始末ヲ為シ一時半頃床ニ入ル
1913（大正2） 年12月21日
十二月二十一日 日 晴 十時半頃ヨリ報知社楼上ニ於テ懸賞写真ノ審査ヲナシ午餐後帰宅 又三時ヨリ日沒迄画筆ヲ執ル 第十三回也 夜歳暮ノ祝儀トシテ橋口家ニ赴キ十二時半還ル
1913（大正2） 年12月22日
十二月二十二日 月 晴 午後一時半ヨリ作画ニ従事ス 第十四回也 櫻井ヲ以テ町井氏ヘ研究所地代ノ件ヲ頼ム 又同氏及齋藤甲子郎君ヘ油画額各一面ヲ贈ル 笄町家及三軒家ヨリ婦人連来訪 夜大槻氏来ル 本日鵜木ヘ電報ヲ発ス
1913（大正2） 年12月23日
十二月二十三日 火 晴 （鎌倉） 午前十時頃ヨリ笄町ヘ伺候シ今晩ヨリ鎌倉ヘ赴ク旨ヲ申上置タリ 帰途父上様御名代トシテ三年町島津家ニ立寄ル 午後黒田鵬心君来訪 又少シク筆ヲ執ル 七時十分発鎌倉ヘ
1913（大正2） 年12月24日
十二月二十四日 水 晴 （鎌倉） 本日ハ建築場ヲ見回ハリ模様更ノ場所ナド取極メタリ 今夜モ鎌倉ニ一泊 照及婢稲召連
1913（大正2） 年12月25日
十二月二十五日 木 晴 午前十時五十七分発一人ニテ帰京 午餐後三越ヨリ武田氏鑑定ノ為油絵持参 又大給子爵夫人尹ヲ連レ入来 夕刻第十六回ノ作画ヲナス 夜研究所ニ於テ和田氏ト会合
1913（大正2） 年12月26日
十二月二十六日 金 半晴 照及下女ハ昨夜々ニ入テ帰京セリ 本日午後学習院ヨリ手当ヲ受ク 僅ニ半時間程執筆 夜ニ入和田君来ル 後一昨日帰朝ノ仲君来 ジヤワ談ヲ聴ク 十一時ヨリ家族一同打寄テおでんヲ食ス