1892(明治25) 年11月4日
十一月四日 曇
九時頃ニ起き小僧の部屋で豆茶ヲのみ夫れから小僧と一緒ニ湯ニ行く 寺尾君の処ニ被物ヲ取りニ行たら橋本氏が来て居た 寺尾君と一緒ニ小僧の内ニ昼めしヲ食ひニ行く 途中元老院の処で電信ヲ出す 田舎へ今日の二時ニハ帰られないと云てやつたのだ 大鳥も食事ニ来て居た 大鳥ニ別れて翁の茶屋ニ行き被聞召 其処ヲ出てて寺尾と長田ニ別れた 五時の気車で田舎へ帰る ブーロンノ停車場で森江老婆ニ逢フ 三条公ノ娘サンモチラト見懸く 久米等の手紙と和郎の手紙ヲ受取る 和郎ハいよいよ親達と議合はず家ヲ飛ビ出すとの事 実ニ奇体サ 自分の気ニ食ハぬ女ヲ無理ニたゝき付けられたらいくら親のスキだと云ても其女ヲジーツと持て居る事ハ出来めへが自分のほれた女ヲ貰ふ事が出来ナイと云テ親と敵ニ為るとハ変だ 親達も親たちサ そんなニむす子が気ニ入つてる女ナラ自分達の気ニ入らずともよめニしてやれバいゝのニ