1900(明治33) 年6月19日


 六月十九日 (欧洲出張日記)
 今日は雲は多いが天気はいゝ 二三日雨でじめじめして居た処だから日が出て一寸いゝ心地だ 風は絶へず有るから甲板の上はさほど暑くない 今日はセイロン島とスコトラ島との半分途位の処だ 夜十二時過まで甲板の長椅子ニ寝ころんで居て見慣れない星などの南の方ニ一杯出て居る空をながめたりして日本はもう今頃は夜の明け方だらうかなどと云ふ事など考たりした アヽ先づ今日などはいくらか気分のはつきりして居る方だ