1900(明治33) 年6月13日


 六月十三日 (欧洲出張日記)
 今日は丁度ベンガル湾を横切つて居る そうしてスマトラ島とセイロン島との真中位の処を行く 此の辺の海の深さは四千メートル近くだ 即ち我一里位のものだ 船の動く事ハ矢張昨日のやうだ 昨日ハ縦ゆれが多かつたが今日は横の方だ 風も少しく加つて来て西南の方から吹く 之れが彼の有名なムーソンの端くれだらうと思ふ 夜窓から水を打ち込だ 寒暖計ハ三十一度位の処だが風が有る為めに甲板に居るとさほど暑さを感じない 夜寝てから汗をかいて手拭をびしよぬれにすることは不相替だ 兎に角毎日体がだるくていけない