本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1892(明治25) 年9月14日

 九月十四日 水 (ブレハ紀行) 今日も終日内籠り也 病気ハよくもならなけれバ又悪くもならぬ 今朝モキナを飲だ 又奇妙ナ草の(サントレと云石竹の種類の様ナ桃色ノ花の咲く草で熱さまし也)煎ジ汁を飲ました 下女なかなか能く世話ヲやいて呉れるわい 昼めしも晩めしも独りで食たせいかもう二日もつゞけて内ニ引籠で居るせいか又病がいよいよ悪いのか知らネへがさつぱり甘くなかつた 昼後ハ久米公 次郎公トカルタを取て遊ぶ 夜食後久米公等のすゝめでチイヨルと云木の葉の振出シヲ飲で汗取りヲやらかす 随分苦ルシカツたが汗ハ能く出た 今日も五時頃ニ尼ちよがやつて来タカラ面倒臭ヒと思ひ今日ハもう余程いゝと云て見たらそうだろうキナが利たニ違ひない面色が昨日から見れバ余程いゝ なニしろ下しが足りないのだなんかんて云て行た みやくも取らずニ人の病気が分る様ナラたいしたもんだ べらぼうめ此の尼ちよが此処で医者の代りヲして居るのだそうだ なる程尼の役ニいゝ役だ だがもう少し医学ヲ心得て居てもらいてへもんだな

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