本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1892(明治25) 年9月11日

 九月十一日 日 (ブレハ紀行) 今朝六時頃ニ起る 七時前ニ手紙を郵便持ニ渡さなけれバ又一日おくれるからこんなニいそいだのだ 総身ニ熱が有る様で気分が本当でネへから憤発して下シ薬をのむ 十一時頃から久米公等と少しく散歩 お昼御膳ハ久米の部屋ニ取り寄せ三人で食ふ 食後村の小供等が宿屋の前ニ集て居てオレが久米公と次郎公ニやつた端書を一枚どこでひろつたか知らないが持て居て名を読で大きな声でからかうから腹が立つた こん畜生め等をれなんかがだまつて居るからいゝ気ニ為て居上ると思ヒ頭痛のするのも打ち忘れ二階から下りて小僧等を逐ヒ廻して呉れた 三時頃から外ニ出て第一をれの部屋が有る内の庭など見る それから東の浜辺の芝原で日影ニ為て居る処ニ行て小説など少し読む 後画をかきニ行く 七時頃迄仕事す 夜食後散歩し海岸で月を見る 宿屋ニ帰て茶を飲む 十時半頃内へ帰る(今日ハ天気が久し振でよかつた)

to page top