1913（大正2） 年8月12日
八月十二日 火 晴 （鎌倉） 九時頃太田資英氏来着 同氏ノ為中島屋ニ一室ヲ約束セリ 午餐将了時相良三介 谷口午二ノ二氏来訪 三時頃ヨリ中島屋ヘ赴キ海ヲ写シ六時過始テ海水浴ヲナス
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1913（大正2） 年8月13日
八月十三日 水 （鎌倉） 昨日今日ハ暑気極度ニ達シタルノ感アリ 時々訪客アリテ午睡出来ズ 夕刻空曇リ俄ニ小雨降タレドモ一時ノ事ニテ後微風モナク暑シ 海岸ニテ雨雲ヲ写ス
1913（大正2） 年8月14日
八月十四日 木 晴 （鎌倉） 午後東 太田二子来訪 共ニ西瓜ヲ食フ 五時頃ヨリ海岸ニ出写景ヲナス 夜九時頃照ト波打際ヲ逍遥ス 月明ニ風涼シク心地ヨシ 今夜姉上様御来着
1913（大正2） 年8月15日
八月十五日 金 晴 （鎌倉） 午後太田子 和田氏 菊地ノ長男 油井子等ノ訪客ニ接ス 和田氏ハ国民美術ノ用向ニ付相談ノ為来訪 夕刻頭痛ヲ病ミ服薬シテ横臥セリ 今夜ハ風ナケレドモ稍冷気ヲ覚フ
1913（大正2） 年8月16日
八月十六日 土 （鎌倉） 東子四時半頃来訪 同人ト相約シテ滑川口ニ到リ日没後図ヲ作ル 又研究所ノ用事ニテ久保子来ル 晩餐後永地氏 菊地子来訪 十時頃ヨリ孝ト浜ニ出タリ
1913（大正2） 年8月17日
八月十七日 日 晴 （鎌倉） 午前十時半頃白瀧幾之助君来訪 午餐後同道ニテ本覚寺書画陳列ヲ一覧 又同人ヲ和田塚迄送リタリ 夕刻東子ト共ニ漁夫ヲ海浜ニテ描写ス 夜佐吉ト語ル
1913（大正2） 年8月18日
八月十八日 月 夜ニ入雨 （鎌倉） 午後二時頃仲省吾君来訪 夜八時半マデ語ル 本日ハ夕刻仲君ヲ案内シテ借地ヲ見巡リタルノミ 終日散歩セズ 亦筆ヲモ執ラズ 夕刻ヨリ雨フリ涼気ヲ催ス
1913（大正2） 年8月19日
八月十九日 火 午前十時頃迄雨 （鎌倉） 午前中歌書ヲ読ミ又湯河原行汽車ノ時間等ヲ調査ス 午後四時過ヨリ姉上様達ト海水浴場ヘ行キ長谷方面ノ風光ヲ写ス 夜永地君来談
1913（大正2） 年8月20日
八月二十日 水 晴 （鎌倉） 下痢症ニ罹リ湯河原行ヲ見合タリ 午後二時頃井上五郎来訪 小倉市ニ於ケル展覧会ノ計画ヲ語ル 夜ニ入再ビ東子同道入来
1913（大正2） 年8月21日
八月二十一日 木 曇 （鎌倉） 午前十時頃大橋正堯君来訪 又按摩ヲ呼ビ療治ヲナサシム 午後ニ至気分殆ド平常ニ回ル 蠅たゝきヲ造リ歌ヲ読ミ又別荘建築図案ヲクネル
1913（大正2） 年8月22日
八月二十二日 金 雨 （鎌倉） 未ダ何トナク病人然タル所アリ 午後又按摩ヲ呼ビタリ 東子画稿ヲ持来リ批評ヲ乞ヘリ 本日ハ雨降デモアリ涼シクモアリ終日枕ト親メリ
1913（大正2） 年8月23日
八月二十三日 土 （鎌倉） 二三日前ヨリ多少感冒ノ気味ナレバ午後靈山氏ニ診察ヲ請ヒタリ 後チ橋口家ニテ蓄音器ヲ聴ケリ 夜ハ照ニ渡辺崋山伝ヲ読マシム
1913（大正2） 年8月24日
八月二十四日 日 午後晴 （鎌倉） 十時半頃櫻井知道来訪 午後一同ト海水浴場ヘ赴キ舟 海ナド写ス 同処ニテ松井昇 林春雄ノ二氏ニ遇フ 晩餐後永地君来訪 九時過櫻井子去ル
1913（大正2） 年8月25日
八月二十五日 月 午前雨 午後くもり （鎌倉） 午前十一時頃床屋ヘ赴ク 途中女学部白石氏ニ遇フ 午後学生江木子来訪 又谷口 相良外一人ノ三氏相携ヘテ来レリ 五時過ヨリ八幡宮ヘ参詣 夜ニ入帰寓ス
1913（大正2） 年8月26日
八月二十六日 火 雨 （鎌倉） 午前八時ノ汽車ニテ照及稲ヲモ連レテ出京 午後三時頃千田嘉平君来訪 用向ハ例ノ平之町養子ノ件也 葵橋ノ工事ヲ視察シ夜八時四五分新橋発両人ト共ニ帰鎌
1913（大正2） 年8月27日
八月二十七日 水 雨 夕刻霽 （鎌倉） 夜中ヨリ午前中稍嵐ノ体ナリシ 少シク頭痛ヲ感ジ臥シテ読書ス 日没後海岸ニ出テ怒涛ノ様ヲ観ル 夜食後照ト郵便局迄行タリ
1913（大正2） 年8月28日
八月二十八日 木 晴 （鎌倉） 嵐後ノ天気好晴ニテ初秋ノ心地現ハル 午前八時ノ汽車ニテ徳子殿 高ヲ連レテ帰京セラレタリ 九時頃大熊氏来訪 終日家ニ在リ詩集ヲ読ム 夜東子来訪
1913（大正2） 年8月29日
八月二十九日 金 晴 （鎌倉） 午前中新聞ナドヲ読ム 午後一時過由井浜町商人某ノ葬儀アリ 門前ヲ通ル 始メテ日蓮宗ノ行列ヲ見タリ 二時過ヨリ東子及孝ト漁船ニ乗リ込ミ海老網下シヲ見ニ行キ四時頃帰宅セリ
1913（大正2） 年8月30日
八月三十日 土 晴 （鎌倉） 午前十時姉上様達十二人二台ノ馬車ニ分乗シテ建長寺ヘ行キ宝物ヲ観ル 又夕五時頃ヨリ東子ト海辺ニテ漁夫ヲ描ケリ 夜読書ス 今夜風有リ
1913（大正2） 年8月31日
八月三十一日 日 曇 少シク風アリ （鎌倉） 内ニ居テ蝦網ノ図ヲ作ル 又夕刻波涛ヲ写ス 徳子殿ヲ東京ヨリ呼ビ君子ヲ連レ回ラシム 夜姉上様ノ為靱太夫ヲ招キ語ラシム 本日兼清来レリ