1913（大正2） 年2月13日
二月十三日 木 （鎌倉） 九時五十分ノ汽車ニテ出京 一時ヨリ三時迄高商ノ授業ヲナシ四時霞町和田氏方ニ到リ依頼セル製作ヲ視六時頃去ル 而シテ八時四十五分新橋発帰鎌ス
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1913（大正2） 年2月14日
二月十四日 金 （鎌倉） 八時発出京 先ヅ女学部ヘ出勤 後自動車ニテ上野ヘ赴ク 新帰朝者兒島子来合居タリ 午後同駅ヨリ電車ニテ葵橋ヘ回リ授業ヲナシ七時四十分新橋発ニテ引返ス
1913（大正2） 年2月15日
二月十五日 土 （鎌倉） Lecture pour Tous ヲ読ム 又午後三時頃ヨリ六時頃迄照ト海浜ヲ逍遥セリ 夜八時町田家ヘ行キ十一時半迄語ル 東京ヘ電話ヲ掛ケ櫻井ヲ代理トシテ川端家ヘ遣ハス
1913（大正2） 年2月16日
二月十六日 日 （鎌倉） 午後四時頃ヨリ照同道外出 八幡様ニ参詣シ帰途袖珍本古事記及西鶴物ヲ求メ又松並木ノ美古屋ニ寄リ蓄音器ノレコードヲ二三枚持チ帰ル
1913（大正2） 年2月17日
二月十七日 月 十時二十六分発帰京 午後二時本所押上町真盛寺ニ於テ執行ノ川端氏ノ葬儀ニ列席ス 照 女中二人共召連夕五時新橋着帰京 夜ハ古手紙ノ整理ヲナシタリ
1913（大正2） 年2月18日
二月十八日 火 午前美術学校ニテ授業 午餐後竹之台ナル児玉果亭翁遺作品展覧会ヲ観 夫レヨリ和田君方ヘ赴キ夜ニ入ル 夜ノ訪客ハ大槻 當舎 兒島 荻原 木田 吉岡
1913（大正2） 年2月19日
二月十九日 水 夜風強シ 上野光風会ノ鑑査ニ出席 午後二時精養軒ニテ食事ヲナシ日吉町小川氏ヘ回ハリ夕刻帰宅 夜菱沼 久保ノ二氏生徒成績品ヲ持参ス 又竹澤 森岡等来訪
1913（大正2） 年2月20日
二月二十日 木 （関西日記） 今午前二時頃神田ニ火事アリ 朝マデ燃エタリ 八時半ノ最大急行列車ニテ照ヲ連レテ神戸ヘ行ク 車中ニテ高島屋主人及有森代議士ニ遇フ 有森氏ハ和蘭ニテノ友人也
1913（大正2） 年2月21日
二月二十一日 金 （関西日記） 昨晩七時半神戸着 例ノ加藤ニ泊ル 今朝十時頃ヨリ造船所ニ出向キ既ニ送リタル千代の松原ノ図ニ修正ヲ加ヘ午後四時帰宿 夜川崎 有森ノ二氏ニ招カレ常盤ヘ赴キタリ
1913（大正2） 年2月22日
二月二十二日 土 （関西日記） 午前十時ノ下リ汽車ニテ明石ヘ赴キ人丸神社ニ参詣シ俥ニテ舞子ニ到リ万亀楼ニテ中食 又汽車ニテ須磨ヘ行キ敦盛ノ碑ヲ弔ヒ雨中電車ニ乗リ夜ニ入リ神戸ヘ回ル
1913（大正2） 年2月23日
二月二十三日 日 （関西日記） 十二時二十五分神戸ヲ発シ大阪ニ下車 直ニ電車ニテ宝塚ヘ行キ有名ナル家族風呂ニ入浴シ七時頃大阪道頓堀島安ニテ晩餐ヲ取レリ
1913（大正2） 年2月24日
二月二十四日 月 曇 霙マジリノ雪フル （関西日記） 午前十合店ニ森岡定之ヲ訪フ 午後北江夫婦ヲ招キ浪華座ニ興業ノ生さぬ仲と題セル劇ヲ観ル ハネ後ニ村田丈来訪 共ニカツフエーヘ行キ一時帰
1913（大正2） 年2月25日
二月二十五日 火 曇 （関西日記） 十一時過銭湯ヘ行キ午後又十合ニ入リ復々観覧セリ 後電車ニテ京都ヘ赴ク 夕刻着 □□（原文不明）屋ニテ晩餐 中井氏ヲ招キ共ニ建仁寺町ヨリ祗園町ヘ出 電車ニテ七条ニ到リ十一時発大阪ヘ回ル 二時就寝
1913（大正2） 年2月26日
二月二十六日 水 曇後雪 （関西日記） 午後二時十五分湊町発 七時半山田着 油屋支店ニ入ル 十時過古市越前屋ニ音頭舞ヲ観ル
1913（大正2） 年2月27日
二月二十七日 木 曇 （関西日記） 内宮外宮参拝 途中徴古館及油屋本店ノ座敷ヲ観 宇治ヨリ電車ニテ二見ニ到リ三時頃朝日館ニテ中食 六時過山田ニ帰着 橋村氏ヲ訪ヘリ 橋村丘璟先生不在 遺憾
1913（大正2） 年2月28日
二月二十八日 金 曇 風アリ （関西日記） 午前八時山田発 午後一時二十分頃名古屋着 平子氏出迎フ 打連テ御城ナド見物シ大洲ノ宮房ニテ晩餐ヲ取リ八時十二分名古屋発ノ上リ列車ニ乗リ込ム
1913（大正2） 年3月1日
三月一日 土 曇 午後雪フル 午前七時二十分新橋着 杉浦君ニ雛人形購入ヲ依頼シ夜裏座敷ニ陳列セリ 本日山田家ヨリ催促アリ
1913（大正2） 年3月2日
三月二日 日 晴 午前研究所生徒某来リ作品ノ講評ヲ乞ヘリ 午後献上ノ菊図ニ修正ヲ加フ 四時頃荻原氏来リ間モナク藤島氏来ル 夜菱沼 久保競技成績品持参
1913（大正2） 年3月3日
三月三日 月 曇 午前十時高商ヘ登校 帰宅後和田氏ニ面接 午後一時南満鉄会社ニ國澤氏ヲ訪ヒ後造船所山田氏 鉄道院中村氏ヲ歴訪シ五時上野精養軒ノ美術家会ニ出席 此日国民美術協会々頭ニ当選セリ
1913（大正2） 年3月4日
三月四日 火 曇 午後一時頃末松子爵入来 続テ中丸氏来ル 夜荻原君 博通社店員同道蓄音器持参 遂ニ購入ニ決シ夜半ニ至マデ浪華節ヲ聴ケリ