1921（大正10） 年6月16日
六月十六日 木 半晴 午後一時過小川 服部ノ二氏かち合セ同席 小川氏先ヅ去リ服部氏残リテ用談 但シ今午前中小笠原伯ヨリ照会ヲ受ケタルモノナリ 大木伯ヘ水子ノ書類ヲ返ス 五時前大河内輝耕君来リ打開ケ話ヲ為セリ 因テ直ニ小笠原伯ニ面会ヲ申入レタルニ却テ先方ヨリ七時来邸セラレタレバ事情ノ大要ヲ告ゲ考慮ヲ煩ハシ九時半マデ雑談ス 又水野子トハ午前ヨリ数回電話ヲ交ハス 十時過ヨリ姉上様 夏子 満子ヲ連レテ御入来
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1921（大正10） 年6月17日
六月十七日 金 曇 訪客諸氏 岡村三良 廣岡惠三 渡邊 伯小笠原 小室 高橋（電気） 鶴屋 子大河内輝耕 子水野 平岡之隆 瀬野 龍田（明月碗持参）ノ二氏玄関迄 大河内子ノ件ニ付小笠原伯入来 本日総理ト会見ノ趣聴取ス 又之レヲ大河内子ニ伝ヘ子ハ更ニ伯ヲ訪問セリ 平岡氏来訪 八郎君ノ遺族ニ関スル話アリテ深更ニ及ベリ 本日ハ諸方面ノ訪客引続キ随分取込ミタリ
1921（大正10） 年6月18日
六月十八日 土 雨 午前十一時頃外務省情報部ニ松岡新一郎君ヲ訪ネ巴里ニ学生寄宿舎設置ノ計画ニ関スル意見ヲ交換セリ 夫レヨリ宮内省ヘ廻ハリ御写真（淳宮殿下ノ）ノ見本ニ尚ホ修正ヲ加ヘ後チ伊東君ニ面会シテ其成績ヲ報告シ且ツ前回ヨリノ問題タル活動写真ノ研究方法ニ付打合セヲナシ午後一時半帰宅ス 渡邊君来診 壇ノ浦ノ史談 幽霊ノ事実等ニテ持チ切ル 大河内子来リテ局長ノ云分ニ付内話アリ 夜水野子ヨリ電話 夕刻躑躅ノ装飾画ヲ試ム 俗悪 作品三点廣岡氏送 装飾画失敗
1921（大正10） 年6月19日
六月十九日 日 雨 午後霽 今暁四時迄新聞ヲ読ム 午前八時半渡邊氏ノ電話ニ目ヲ覚ス 吉本博士ノ都合ヲ知ラセタリ 又眠ル 十一時頃丸木氏ニ起サル 曾我君来ル 又八色氏突然入来 辞職ノ理由ヲ語ル 二時吉本博士来診 渡邊氏立会フ 照子モ健康診断ヲ受ク （欄外 研究所互評会 三点出品 天地会断 作品三点又廣岡氏送 計六点）
1921（大正10） 年6月20日
六月二十日 月 晴 午前二時頃ヨリ五時頃マデ水野子ト語ル 瀬野覺藏画会賛助員ノ件ニ付来訪 又河合秋平氏来リテ海国少年ノ表紙絵揮毫者ノ選定ヲ頼ム 即チ万事岡野ヘ相談スベキ旨ヲ告ゲ六時半パンテオン会ニ出席ス 快談十時過ニ至ル 加藤君ヲ日仏ノ副理事長ニ推薦スルコトヲ議決シ山田君ト小子トノ二名其実行員ニ挙ゲラル 又幸出席ノ寺尾君ヘ瀬野ノ願意ヲ通ジ承諾ヲ得タリ 帰宅後諸方ヘ電話
1921（大正10） 年6月21日
六月二十一日 火 曇 夜雨 午前九時半頃大河内（輝）子ヨリ電話アリ 仲氏玄関マデ来リ 後又電話 午後二時×四時霞関離宮ニ於テ大澤 渡邊其他諸氏ト窓掛敷物等ノ相談ヲナセリ
1921（大正10） 年6月22日
六月二十二日 水 曇 宮内省淳宮殿下ノ御写真ノ見本ヲ調度ニ提出セリ 又大館ノ辞表ヲ取次グ 水野子ト昨夜帰京セラレタル頼倫侯ヲ訪問ス 夫レヨリ青木子方ヘ廻ハリ後チ水野子ヲ大塚マデ送リテ帰ル 小笠原伯入来 此時頼倫侯ヨリ十人会ノ通知アリ 因テ明日ノ会合ナドノ打合セヲナセリ 小林萬吾君ト学校ノ事ニ就キ語ル
1921（大正10） 年6月23日
六月二十三日 木 晴 小笠原伯邸ニ小集催サレ諸問題ノ相談ヲナス 青木 水野二君モ来会 新海氏支那漫遊記念品二点銀印及扇子ヲ持参来訪 岡野氏海国少年挿画ノ件ニ付来訪 水野子入来 此夏期ニ於ケル処置及尚友会ニ関スル話アリタリ 今朝十時白山下心光寺ニ於テ清光院吉岡芳陵君ノ三七忌日ノ法要営マル 因テ卒都婆一基ヲ供フ
1921（大正10） 年6月24日
六月二十四日 金 曇 夜雨 徳川侯邸会合 出席者如左計十一名 蜂須賀侯 大木伯 松平頼壽伯 小笠原伯 水野子 勘解由子 青木子 前田子 酒井子 肅正問題 尚友会評議員及幹事 頼倫侯対総理等ノ相談 解散後小笠原邸ニ青木 水野ノ二子ト四人再ビ会合シ前記ノ第三問題ニ就キ協議セシモ遂ニ纏ラズシテ別レ九時半頃帰宅 午後三時湯島麟祥院ニ於テ憲邦王ノ仮葬式執行セラルヽ旨通知ニ接シタレバ使ヲ以テ弔意ヲ表シタリ
1921（大正10） 年6月25日
六月二十五日 土 小雨 参内 拝賀 賜饌 （欄外 皇后陛下御誕辰拝賀 淳宮殿下御誕辰参殿 水野子 波多野子爵邸 青木子邸小集三名 薔薇花板寸額一面）
1921（大正10） 年6月26日
六月二十六日 日 小雨 （欄外 三縁亭会合 主人三浦男 青木子 水野子 結城禮一郎氏 小笠原邸青木 水野子 鍋島侯告別式）
1921（大正10） 年7月2日
七月二日 土 晴 服部氏ヨリ電話アリ 直チニ伊東事務官ヘ転告シ明後日活動写真ノ技師ヲ同道スベキコトヲ約ス 結城氏ヨリ形行ニ付テノ問合セニ対シ先日情報部ヘ赴キタレドモ意見書提出ニ至ラザリシ旨ヲ答ヘタリ 山岸主計画会開催ニ関シテ来訪 袖ケ崎島津邸ニ於テ什器調査会催サル 今回ハ去二十九日ノ続ニテ普通品ノ調ナリ 二時半出席ス 五時過了リテ鑑定家伊丹氏ヲ内幸町迄来リテ帰ル 大河内子入来 任命済ム 尚ホ芝行ヲ勧ム 中橋文相ヘ使ヲ以テ招待ノ返事ヲナス
1921（大正10） 年7月3日
七月三日 日 晴 午前柴田氏寄附金ノ件ニ付入来 慶応元年ニ建築セル御蔵ノ修繕費ナリ 金額ハ柴田氏ニ一任ス 山岸主計更ニ画会後援ノ主意書ヲ持参ス 少シク訂正セシム 午後渡邊氏来ル 水野子来ル 三浦男ト朝ヨリ語リタル帰リナリ 夜ハ手廻ハリノ小道具類ヲ整理セリ
1921（大正10） 年7月4日
七月四日 月 晴 （欄外 松竹連 調度 御写真部 総理官邸 瓢家 小笠原伯 青木子 水野子）
1921（大正10） 年7月5日
七月五日 火 晴 （欄外 徳川侯邸 小笠原伯邸）
1921（大正10） 年7月6日
七月六日 水 半晴 イヤナ暑サノ日ナリ 珍ラシク終日外出セズ 客ハ相変ラズ引続ク 渡邊 小室 三浦男 下村宏氏 水野子ノ右三浦男以下皆下村氏ニ関スル議員問題ノ為ニ来レリ 結局頼倫侯ヨリ此問題ヲ吾々ヘ引受ルニ在リ
1921（大正10） 年7月7日
七月七日 木 小笠原伯方ニ午前十時半青木 水野ノ二君ト四人集ル 先ヅザツト下宏氏ノ件ニ付談合シ又相互ニ各種ノ報告ヲナス 而シテ午餐ヲ共ニセリ 二時半 （欄外 父上様 清兼君御忌日 小笠原伯邸 霞関輝耕子 文相邸礼 総理私邸 自宅会合 伯令弟 小笠原伯 青木子 水野子 仏大使館ボンマルシヤン氏電話）
1921（大正10） 年7月8日
七月八日 金 曇 夜雨 暖下降 （欄外 蜂須賀侯邸午餐 外務情報部 南部伯訪問 小笠原伯電 水野子電）
1921（大正10） 年7月11日
七月十一日 月 晴 蜂須賀侯邸 午前十時前綱町ノ邸ニ到リ飯倉ニ於ケル会見ノ模様ヲ語ル 小笠原伯モ見エタリ 調度寮十一時頃到着ス 寮頭其他自動車検分中ナリ 内匠寮 寮頭ヨリ内談アリ 上田屋 調度頭渡邊式部官 李技師等ト屏風壁掛等ヲ観ル 霊南坂離宮ノ装飾ヲ一覧シ意見ヲ述ブ（迎賓準備） 早川邸留別晩餐 来賓ハ首相 蜂須賀侯 小笠原伯 頼壽伯 青木子 前田子 酒井子 水野子 主客十名ナリ
1921（大正10） 年7月12日
七月十二日 火 晴 昨今漸ク暑気ヲ催ス （欄外 大河内輝耕子 紅葉館雨潤会 陸奧伯欠席 水野子電話 留守中）