1900(明治33) 年6月21日
六月二十一日 (欧洲出張日記)
朝の内は船のゆれが昨日ニかわらない 十二時頃に漸くスコトラ島の北に来た 此のスコトラ島は中々大きなもので又かなり高い頭のぎざぎざに切れた岩山が見える 白い砂が谷間から海岸へ流れ出したやうな処も二ケ処程見えた 此の島にはアロエスと云ふ木が少し有る計で其他の樹木ハ何もない 島中には三四百人位づゝのアラビヤ人の村落が有るそうだ 此処ニ来てから海が少しく静ニ為つた 昨夜サイゴンから乗つた一人の病人が死んだので今晩六時ニ水葬をやつた 棺をドブンとしづめてそれでお仕舞だ
終日風が有つて少しも暑いと思ハない 部屋の中ハ暑いやらくさいやらで安眠は出来ない