1904(明治37) 年5月29日

昼後佐野来り、小代を訪ひ三人で散歩、附近の植木屋をひやかし、又青山御所前の草花を見る。中々綺麗な花が沢山あつた。一寸佐野がゼラニオムを買ひはじめてから小代も媼さんの調子の佳いのに乗せられ、終にはわれも引込まれてナデシコを一鉢とそれからセキコクを一つ七拾銭といふのを五拾銭に負けたのでしよいこみになる。媼さんは息子が兵隊になつて居るから、娘と二人女手で商売をして居ると話した。三人とも左右の手に植木鉢をブラ提げて帰つて来た。小代の処に立寄つたが、内から小供が二度ばかり迎に来たといふ事で必定小泉が来て居るのが分つた。何しろ植木を持つたので大にくたびれたから一と休して五時過に帰つて見ると小泉高信がこまを相手にして既に始めて居るのであつた。間もなく小父さんも来て大に賑ひ野田岩の丼飯の注文が遅くてやりながら食するに暇なしである。

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