本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1895(明治28) 年2月4日

 二月四日 (従軍日記) 高等文官の宿ハオレ等ノ居る家の条向だと云事ハ聞て居たけれど此ノ二日と云ものハ風の気分で引込で居たから出懸ず 今日ハ昨夜の登山ナドニもかゝわらず病気も殆ド全快故一寸話ニ行た 島村 荒川 松方三氏皆お揃ニテいづこも同じく此の不意ナル滞在ニお体屈ノ体也 先生方ノ宿もオレナドノ居ル家より左程立派でもない オレが行て居る内ニ或ル新聞社の野間某と云人が来て大寺少将等戦死セラレタル時の模様ヲ委しくかたりそれから琉球ニ居りしとかにて同国の気候風俗産物等の話ヲ始めたので面白ク長座して帰る 今日メール新聞ノ頭本君帰りくる 氏ハ去ル二十九日より我党を去り行方知れず為つて居りしニ二師団の方ニ行て居て戦闘線ニ出て戦の様子を見て来たとて帰へり来られたり 先ハ或ル新聞記者が戦死せシト聞し時ニハ大層心配したが先無事で結構 夜越智君が友人ニ鯉ノ滝上りト金杯と云芸ヲスルモノ有リト云話をして皆大笑す

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