本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1895(明治28) 年2月9日

 二月九日 (従軍日記) 朝村田少佐ヲ訪ひ船便の事を話す 山本 林の似氏昼めしを食て直ニ威海へ立つ 夜食後原田君も威海へ行 皆ゝ此の永逗留ニ体屈し始めたのだ オレもいつ迄もこうして居られぬから船の都合ニ依テハ帰つて仕舞ンかと思ひ今朝村田氏ニ頼で置たら藤井少佐が引受たとの事故今夜司令部内の参謀部ニ行藤井氏ニ会フ 船便を聞たら明朝分るとの事 今日ハ久し振で水彩ノ景色ヲかきニ出て夕方帰る 堀井君が山本ニ代りて管理部長と為り料理をやらかす 非常ニ甘き味噌汁ナドが出来た 此事を妻君ニ云てやりたいものだナドト雑談を云てめしを食ひ酒を飲む 二人人がへつたので余程ゆつくりとし座てめしヲ食た 例の如くしやれやら又盛ニうぬぼれ話ナドが出て面白シ 今夜雪が降り出シ夫ニ月ハよく寒い景色也

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