本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1895(明治28) 年2月16日

 二月十六日 (従軍日記) 朝五時頃ニ船再ビ進行し始めぬ 七時頃起出でゝ見れバ左右ニ一と筋の山ぞ見へけり 昼めしの頃ニハ陸いよいよ近づき村も処々見へ麦畑とおぼしく青々としたる処の有るなど今迄の不愉快ナル気分もくるしき支那の戦も皆忘れ去りて未来即チ此の舟のとゞまらん処ニハ言語ニ盡されぬ楽しき事の待ち居るかの如き思ひ起りぬ

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