本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1892(明治25) 年12月11日

 十二月十一日 日 切角すへさした暖炉の煙筒の向ケ方が悪いので其すへ直シ方ヲしようとして家主ト和郎と三人仕事して居る処ニブツフアールがオレの菊の画ヲ見ニ来た(昼後の三時頃) 焼酎など飲でしばらく話して行く 明日巴里へ一寸帰ると云て居る 夕方とうとう煙筒ヲすへ直シた 家主が若い時ニハ左官だつたそうにて壁ニ穴ヲ開ケたりなんかする事ハ得意也 夜美陽家ニ少し話しニ行き後宿屋ニ行きブツフアール等とちよつとおみきを頂く ブツフアールハ古巣ニ約束がして有るからと云て出る 和郎の講義ヲ九時頃迄聞き帰る 和郎一緒ニオレの内へ来て読み続きを十時過迄演ズ 美陽家で美天小僧が股引の中ニ糞ヲたれたと云話ヲ聞く 我身の小供の時の事ナドが思ヒ出される 其序ニ内ニ居たあの細島でゆわしの頭ヲ食て居た富公の事が頭ニ浮だ どう為たかしらん

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