本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1892(明治25) 年12月12日

 十二月十二日 月 雨 朝十一時頃ニ昼部屋ニ行たら和郎が書物して居た 十二時過迄描キ帰リ懸ニ海老の缶詰ヲ一つ買フ 夫レカラ寿の処ニ肉ヤパンや酒なと取リニ行ク 寿ニ海老ヲ少シ分ケテやつた 食後昼部屋ニ行前ニ鞠の処ニ立寄リ三十分計話す 奴が明日ハ手本ニ為て呉れるとの事也 暗く為る迄勉強す 矢張菊の花也 今日ハわりニ仕事が進だ 夜食ニハ又カブヲ煮て食ふ 夜ハ内ニ居てミレの伝ヲ読む 和郎九時頃ニちよいと来た 宿屋の台所で下女などとつゝかまへて馬鹿話ヲしたと云て居た たまニハお相手役ヲ更へる方が何ニより結構ナ事と思フ 今朝川村からの端書が着て松方氏ハ巴里ニハ来ズニ直ニ龍倫から亜米利加の方へ行と云て来た 逢へずニ残念ス

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