1917（大正6） 年3月4日
三月四日 日 午前雨 午後晴 （鎌倉） 御容体引続キ稍々好キ方ナリ
本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。
1917（大正6） 年3月5日
三月五日 月 晴 風アリ （鎌倉） 午前十一時頃原因不明ノ悪感アリ 為メニ御熱又八度代ニ上ル カンフル注射滋養灌腸ノ外今夜食塩注射ヲ行フ 午前出京 女学部ニ至リ新案教授要目ヲ浜氏ニ説明シ部長ヨリ仏人嘱托ノ要件ヲ聴キ引取ル 午後五時過鎌倉島津邸ニ平田氏ヲ訪ネ薩英戦争記念碑ノ図案ヲ渡ス
1917（大正6） 年3月7日
三月七日 水 晴 （鎌倉） 御重態ノ記事諸新聞ニ見ユ 随テ見舞客見舞状等夥シ 併シ御容体ハ一回ノ悪寒モナク先ヅ御宜シキ方也
1917（大正6） 年3月10日
三月十日 土 午前晴 午後三時半頃ヨリ雨 （鎌倉） 弥々御快方ニ向ハセラル 殊ニ午後ニ至リテ御脈其他総テ順調トナル
1917（大正6） 年3月12日
三月十二日 月 曇 （鎌倉） 陸奧伯ヲ訪問シ雨潤会ノ件等ニ就キ約一時間許語レリ
1917（大正6） 年3月14日
三月十四日 水 雨 （鎌倉） 奏笙軒ニテハ午食時中村勝君来訪 学校卒業製作採点ノ報告ヲ聴ク
1917（大正6） 年3月15日
三月十五日 木 曇 （鎌倉） 午後二時半伺候ス 本日ハ又々御熱モ高ク御脈百十位迄上ル 帰宅後間モ無ク仲省吾君入来 女学部長ヨリ申来タル用向ヲ同氏ニ頼ミタリ
1917（大正6） 年3月17日
三月十七日 土 晴 （鎌倉） 徹夜
1917（大正6） 年3月19日
三月十九日 月 雨 （鎌倉） 午前十一時頃高橋 森川ノ二氏来着 排尿手術大ニ困難ニテ約一時間半ヲ要シタリ
1917（大正6） 年3月20日
三月二十日 火 （鎌倉） 吉本 高橋ノ二氏同道来診セラル 切開部ノ経過佳良ニシテ御熱ナク御食欲モ増進ス 併シ吉本博士ハ偏ニ心蔵ヲ気遣ハレル模様ニ察セラル
1917（大正6） 年3月21日
三月二十一日 水 曇 （鎌倉） 今朝諸新聞ニ又御重態ノ記事ヲ見ル
1917（大正6） 年3月23日
三月二十三日 金 （鎌倉） 午前四時二十分薨去 帰京
1917（大正6） 年3月30日
三月三十日 金 御葬儀
1917（大正6） 年4月4日
四月四日 水 晴 扇子ノ代償トシテ鶴子ニ油絵薇薔花ノ額ヲ与フ 区役所ノ相続届済ム
1917（大正6） 年4月5日
四月五日 木 曇 平岡之隆氏ニ起サル 自像ノ達磨ヲ画キ九鬼男ヘ贈ル
1917（大正6） 年4月6日
四月六日 金 半晴 風アリ 暖気加ハル 笄第ニテ大迫氏ノ来訪ニ接ス 又同第ヨリ風雅帳ヲ持チ帰ル
1917（大正6） 年4月8日
四月八日 日 晴 風アリ塵立ツ 十時過ヨリ袖ケ崎島津邸ヘ赴ク（昨日御使ヲ給ハリタレバ也） 牧野男ヲ座長トシテ行幸啓ニ関スル準備ノ相談会催サル 午後三時頃辞去
1917（大正6） 年4月9日
四月九日 月 半晴 女学部始業式 午前八時ガロア氏夫婦ヲ女学部ニ案内ス 部長ヨリガロア夫人ニ辞令交付ノ事アリ 後同道帰邸十時両人去ル 午後一時ヨリ五時迄島津邸会合
1917（大正6） 年4月11日
四月十一日 水 晴 夜和田三造子来訪 本日神戸長田戒三氏ヨリ秋涛遺著図南録ヲ寄贈セラル
1917（大正6） 年4月12日
四月十二日 木 晴 午前中澤 磯谷一平 午後一時頃仲省吾君等来ル 島津邸ニテ鹿児島鮨ノ馳走ヲ受ク 読売及日日ノ紙上ニアルカンボー氏ノ訃ヲ伝フ 去ル四日逝去ノ由也 又知己一人ヲ失ヘリ 陸伯ヨリ雨潤会ノ報告書ヲ受ク