本データベースでは中央公論美術出版より刊行された『黒田清輝日記』全四巻の内容を掲載しています。なお、デジタル化にともない、正字・異体字・略字や合成文字は常用漢字ないし現行の字体に改めました。



1904(明治37) 年6月11日

 六月十一日 土 雨 小西氏午前十一時来診 御容体ハ御脈拍ニ付テ少シク申分有ルノ外総テ宜シキ方ナリトノ事也 十二時頃白尾氏ノ妻君鯛一尾持参見舞トシテ来訪 一時頃ヨリ山芳翁書割及左団次最後ノ演伎見物ノ為メ明治座ヘ出懸ケ夕刻帰宅セリ 不治ノ病ニ罹リ居ルノ身ヲ以テ力メテ舞台ニ登ル左団次ノ心中思ヒ遣ラレタリ 夜ハ一時過マデ例ノ遺事録取リ纒メ方ニ従事セリ 芝居ノ外題ハ敵国降伏ニテ時節柄適当ナレドモ入場者至テ少シ 故ニ左団次ノ為メ一層気ノ毒ニ感ジタリ

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